この記事では
  • Google Vaultとは
  • Google Vaultの使用用途
  • バックアップの使用例
  • バックアップとアーカイブの違いを理解する
  • Google Vaultが必要な場合とそうでない場合
  • Google Vaultをバックアップ ソリューションとして使用すべきではない理由
  • Google Vaultに関するよくある質問

Google Vaultとは?バックアップとの違いを解説

13 Aug 2021
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読了時間:10分
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執筆者:Athi Karthick
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ブログ記事

よくある誤解ですが、Google Vaultはバックアップソリューションとして設計されていません。Google Vaultをバックアップツールとして使用しようとすると、後で困ることになります。
なぜなら、Vaultには自動復旧や特定の時点に戻すリカバリーなど、重要なバックアップ機能が欠けているためです。

1. Google Vaultとは

Google Vaultは、大企業向けに設計された「アーカイブ」と「eDiscovery」ツールであり、訴訟やコンプライアンスの目的でデータの検索、保持、保管を行うためのものです。Vaultは規制要件を満たすために役立ちますが、バックアップ専用のソリューションと同じ機能は搭載されていません。
データのバックアップとアーカイブは同じものだと誤解されがちですが、実際には、両者は異なる目的を持っています。

2. Google Vaultの使用用途

Google Vaultは、Google Workspaceの管理者に以下の機能を提供しています。

  • Google Workspace全体で組織のデータを保持
  • 特定のメール・チャット・ファイル・メッセージなどを検索
  • 法的またはコンプライアンスの必要に応じて、検索結果をエクスポート
  • 2.1. Google Vaultを使用してデータを保持する方法

    例えば、不満を持った従業員がGoogleドライブから重要なデータを削除し、その後ごみ箱からも削除したとします。その場合、Google Vaultを導入していれば、そのような従業員の行動を心配する必要はありません。
    Google Vaultでは、Google Workspaceアプリ全体にわたるカスタム保持ルールを作成できます。これにより、ユーザーがファイルやメールを完全に削除しても、設定したルールに基づいてVaultがデータを保持します。
    下図は、Google Vaultの保持ルールの例として、すべての従業員の削除されたメールを1年間保持し、すべての従業員のドライブファイルを無期限に保持する設定になります。

    1.Google Vaultの保持

    2.2. Google Vaultでデータを検索する方法

    法的な調査や記録の要求があった場合、Google Vaultの高度な検索機能を使用することで大幅に工数を削減することができます。
    Google Vaultを使用すると、Gmailのメッセージ、チャットやグループ内のメッセージ、ユーザーのドライブ内のファイルを検索できます。
    下図は、「Confidential(社外秘)」という単語を含んだメールを検索する例です。

    2.グーグルボールト検索

    「Confidential(社外秘)」というキーワード検索をした場合の検索結果が下図のようになります。

    3.Google Vaultの検索結果
    高度な検索機能には、アカウント内での検索、特定の日付範囲で送信されたメールの検索、添付ファイルのあるメールなどを検索対象にできます。

    同様に、Google Vaultがサポートしている他のGoogle Workspaceアプリでも検索を行うことができます。

    2.3. Google Vaultでの検索結果をエクスポートする方法

    Google Vaultの検索機能を使用してデータが見つかったら、管理者は検索結果をエクスポートして外部で確認することができます。エクスポートはPSTまたはMBOX形式でダウンロードでき、Outlookなどのメールクライアントと互換性があります。
    Vaultのエクスポート機能は、法務チームやコンプライアンス担当者に過去のデータを提供する際に特に有用ですが、Google Workspace環境にデータを復旧することはできません。
    以下のスクリーンショットは、Google Vaultの検索結果をエクスポートしてダウンロードするイメージです。

    4.Google Vault ダウンロード

    注意:メールはPST形式またはMBOX形式でダウンロードされます。それを表示するためには、Outlookのようなメールクライアントが必要です。

    記録保持(リティゲーションホールド)や案件の作成、保持ルールの設定、Google Vaultでのレポート生成については、「管理者のためのGoogle Vault完全ガイド」をご覧ください。

    3. バックアップの使用例

    SysCloudのようなバックアップソリューションを使用すると、以下の主要機能を利用できます。

    • 組織のデータをバックアップ

    • バックアップされたデータを復旧・エクスポート

    下図がSyscloudのダッシュボード画面イメージです。

    SysCloudダッシュボード
    SysCloudダッシュボード

    3.1. バックアップデータの表示

    Syscloudを使用すると、全てのユーザーデータのバックアップ進行状況を監視できます。

    バックアップ状況

    管理者は、バックアップアーカイブ内で各ユーザーのバックアップデータを確認することができます。

    3.2. SysCloudバックアップソリューションを使用したデータ復旧(リストア)

    すべてのメールをリストア

    ある従業員のGmailデータが誤ってすべて削除されてしまった場合は、下図のようにSysCloudを使用して、メールアカウント全体をリストアします。

    電子メールの復元

    すべてのメール(受信トレイ、送信済みアイテム、ごみ箱、カスタムラベル)は、元の場所に復旧されます。

    4. バックアップとアーカイブの違いを理解する

    バックアップ

  • 現在使用中のデータを保護
  • データのセカンドコピーを作成
  • 予期せぬデータ損失時に重要データを復旧可能
  • アーカイブ

  • 参照用に過去のデータを保持
  • 指定された期間データを保持
  • データ保持が目的であり、復旧やリカバリーは不可
  • 5. Google Vaultが必要な場合とそうでない場合

    5.1. スモールビジネスにはGoogle Vaultは不要

    Business Starter/StandardなどのGoogle Workspaceプランを使用している中小企業の場合、Google Vaultの高度なeDiscoveryやコンプライアンス機能は必要ないかもしれません。(Vaultのコストがそのメリットを上回る可能性があります)
    Google Vaultのコストは、Google Workspaceアプリのライセンスとは別に、1ユーザーあたり月額5ドル必要になります。各ユーザーにデータを保存するために多額の費用をかけたとしても、削除されたデータを表示、回復、復旧するためには、SysCloudのようなバックアップソリューションが必要です。
    企業規模に関わらず、迅速で信頼性の高いデータ復旧を確実にするためには、SysCloudのような専用のバックアップソリューションを導入することはすべての企業にとって重要です。

    SysCloudは、スモールビジネスのeDiscoveryニーズに対応する基本的な検索機能を提供しています。詳しくは、SysCloudの「eDiscovery検索オプション」をご覧ください。

    5.2. 大企業にはGoogle Vaultとバックアップソリューションが必要

    大企業にとって、Google Vaultは、法的および監査目的でデータを保持、検索、エクスポートすることで、eDiscoveryやコンプライアンスにおいて重要な役割を果たします。しかし、Vaultだけでは失われたデータを迅速に復旧したり、フォルダ構造や共有権限を維持して復旧することができないため、包括的なデータ保護には不十分です。
    複雑なデータニーズを抱える大企業では、コンプライアンスのためにGoogle Vaultを使用すると同時に、SysCloudのような強力なバックアップソリューションも必要です。これにより、データ損失、ランサムウェア、誤削除から保護されます。
    この組み合わせたアプローチにより、データは法的目的で長期的に保持されるだけでなく、事業継続性を維持するために簡単に復旧できるようになります。

    6. Google Vaultをバックアップ ソリューションとして使用すべきではない理由

    Google Vaultは、法的およびコンプライアンスを遵守するために設計されたアーカイブおよびeDiscoveryツールであり、バックアップソリューションではありません。専用のバックアップツールの代替にはなりません。
    Vaultには自動復旧機能がなく、共有権限やフォルダー構造を保持しないため、Googleの一部サービス(連絡先、Keep、タスクなど)のデータを復旧することもできません。
    Google Vaultをバックアップの代替として使用すべきでない理由は以下の通りです。

    • 復旧機能がないため、データ損失が発生した際に復旧するのが困難です。

    • 削除されたアカウントのデータは保持されません。ただし、Vaultは一時停止されたユーザーのデータは保持(バックアップではありません)しますが、一時停止されたユーザーもアクティブユーザーとして料金が請求されます。

    • Gmail、ドライブ、カレンダー、グループ、チャット、Meetのデータは保持されますが、連絡先、Keep、タスクなどのGoogleサービスからのデータ復旧はサポートされていません。(2024年9月時点)

    • 組織のデータのセカンドコピーがないため、Google側でシステム障害が発生した際に問題が生じる可能性があります。

    • Vaultは共有権限やフォルダー構造を保持しないため、エクスポートしたデータの整理が難しくなります。

    上記の通り、バックアップを行わずにGoogle Vaultのようなアーカイブソリューションだけに頼るのは賢明ではありません。効果的なデータ保護と保持のプロセスを確立するためには、バックアップとアーカイブを併用することが重要です。
    Google Workspaceアプリのバックアップとデータ保持に関する詳細な手順については、以下の記事をご覧ください。
  • 【完全ガイド】Googleドライブをバックアップする方法

  • Google共有ドライブのバックアップ方法

  • 企業向けGoogleドライブ保持ポリシーのガイド

  • 図解でわかるGmailのメールをバックアップする方法

  • Gmailにおけるデータ保持のガイド

  • Google Keepのバックアップ方法

  • Google Meetのデータ保持ガイド

  • Googleグループにおけるデータ保持ガイド

  • Google Chatのデータ保持完全ガイド

  • Googleサイトを保持するためのガイド

  • 7. Google Vaultに関するよくある質問

    Q::Google Vaultはバックアップソリューションですか?

    A:いいえ、Google Vaultは法的コンプライアンスのために設計されたアーカイブおよびeDiscoveryソリューションです。削除されたデータを復旧したり、元の構造や権限を持つファイルを回復することができないため、バックアップソリューションとしては適していません。

    Q:Google Vaultの料金はいくらですか?

    A:Google Vaultは、Google Workspace Business PlusおよびEnterpriseプランに含まれています。
    Business Plusプランは、1ユーザーあたり月額$21.60(年額払いの場合、月額$18)です。
    Enterpriseプランは、企業のニーズに基づいてカスタム料金が設定されます。
    低価格プラン(Business Starter:年額払いで月額$6、Standard:年額払いで月額$12)の企業向けには、Vaultを1ユーザーあたり月額$5で追加購入することが可能です。

    Q:Google VaultはGoogleドライブをバックアップしますか?

    A:いいえ、Google VaultはGoogleドライブのバックアップを行いません。管理者が設定した保持ルールに基づいてファイルを保持し、法的目的のためにデータを検索およびエクスポートできるだけですので、Vaultは自動的にバックアップを作成せず、誤って削除されたり破損したファイルを迅速に復旧することはできません。

    Q:Google Vaultはカレンダーをバックアップしますか?

    A:いいえ、Google VaultはGoogleカレンダーのバックアップを行いません。ですが、他のGoogle Workspaceアプリのデータと一緒にカレンダーイベントをアーカイブすることはできます。Vaultはカレンダーイベントの保持とアーカイブをサポートしますが、迅速なデータ復旧を目的とした専用のバックアップソリューションの代替にはなりません。

    Q:Google Vaultにはどれくらいの期間のデータが保存されますか?

    A:データは組織が設定した保持ポリシーに従ってGoogle Vaultに保存されます。管理者は、データを無期限に保持するか、特定の期間のみ保持するルールを設定できます。ただし、データが完全に削除され、保持期間を過ぎた場合、Vaultを通じて回復することはできません。管理者は削除されたアカウントのデータを20日以内であれば復旧可能ですが、それを過ぎるとデータは完全に失われます。

    Q:ユーザーを削除する前に、Google Vaultでデータをバックアップできますか?

    A::いいえ、ユーザーを削除する前にデータをGoogle Vaultにバックアップすることはできません。一度アカウントがGoogle Workspaceから完全に削除されると、関連するすべてのデータも削除され、Vaultを通じて復旧することはできません。
    管理者は、ユーザーを削除する前に専用のバックアップソリューションを使用して重要なデータをバックアップする必要があります。

    Q:Google Vaultは退職者のデータをアーカイブしますか?

    A:Google Vaultは、一時停止されたユーザーのデータをアーカイブしますが、アカウントが完全に削除されたユーザーのデータは保持しません。管理者は、ユーザーを一時停止してデータをVaultに保持することができますが、一時停止されたユーザーはアクティブユーザーとして料金が請求されます。

    Q:Google Vaultを長期間設定すれば、バックアップソリューションになりますか?

    A:いいえ、長期間データを保持する設定をしても、Google Vaultはバックアップソリューションにはなりません。Vaultは、アーカイブや法的ホールドのために設計されており、データの復旧を目的としたものではないからです。
    誤削除やデータ損失時にデータを復旧できるようにするためには、Vaultと併用して専用のバックアップソリューションが必要です。

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    • Google Vaultの使用用途
    • バックアップの使用例
    • バックアップとアーカイブの違いを理解する
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